イクメン作家と恋心。初期版。(修正済み&205ページ挿し絵有り)
小さな手を拭いてあげると睦月君は、
それをジッと見つめていた。
「よし。綺麗に拭けたわよ」
そう言ってニコッと微笑むと
「…ありがとう」とお礼を言ってくれた。
話さない睦月君にとったら貴重な言葉だ。
何だか嬉しくなった。
そうすると先生が
「食べ終わったんなら帰るぞ」
ノートパソコンを閉じながら言ってきた。
「は、はい」
私も慌てて帰り支度をする。
カバンを持ちトレーを持とうとしたら
先生が持ってくれた。
「お前は、持たんでいいから睦月を頼む」
「は、はい。分かりました」
慌てて言うと先生は、片付けに行ってしまう。
私は、睦月君に上着を着せると
手を繋ぎ行こうとした。
女子高生達は、チラチラとこちらを見ていたけど
あまり気にもならなかった。
それは、睦月君が気遣って
意識を逸らしてくれたお陰かもしれない。
出口側で待っていた先生と一緒にお店を出た。
並んで歩いている中、チラッと先生を見た。
前を向き黙って歩いていた。
その姿は、姿勢がよくカッコいい。
そうしたら
「周りが何を言おうが気にするな。
言いたい奴に勝手に言わしておけばいい」
素っ気なく目を合わせずに言う先生。
先生……。
「は、はい。あの話しの内容を
聞いていたのですか…?」
まさかのアドバイスに驚いてしまった。