痛々しくて痛い
湯気が立つカップ片手に自分の席に戻ると、染谷さんは楽しそうな表情、声音で大庭さんに向けて言い放つ。


「や、だって、ホントのことですもん。そりゃ、オレだってボケをかます事はありますよ?でもそれは『周りの人を楽しませよう、面白い事を言おう』っていう考えのもと、ちゃんと計算しながらやってるんですから」

「へぇー。そうなの?」

「そうですよ。いわば、芸人さんのボケ担当と同じ技術です」


胸を張り、キリッとした表情のまま大庭さんは続けた。


「ただ、自分が狙っていたのとは違うポイントで、笑いが起こる事が多々あるってだけで」

「いやだから、それが天然なんだっつーの!」


染谷さんと絹田さんが再び同時に突っ込み、麻宮君はまたもや「ブフォッ!」と吹き出した。


「うわー。びっくりした。これが『本物』の思考回路なんだ」

「やっぱ師範代はレベルが違うわー」

「アハッアハハッ」


容赦なく畳みかけるように発せられた染谷さん絹田さんの言葉、目の前で肩を揺らし、顔を真っ赤にして笑い転げている麻宮君の姿を聞いたり見たりしているうちに、何だか私もすごくおかしくなって来てしまって、思わず「ウフッ」と笑いを漏らした。


「……ハイハイ。良いですよもう、そういう事にしておけば」


やれやれ、といった表情で言葉を吐き捨てながら、せかせかとお弁当のフタを開ける大庭さんの姿がさらに笑いを誘う。
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