痛々しくて痛い
何だろう、この感じ……。


複数人からある事柄について指摘を受け、笑われるというシチュエーション。


ズバリ、大庭さんだけではなく、私もその渦中にいる。


学生時代に何度も経験し、その度に、情けなくて恥ずかしくて申し訳ない気持ちで、その場から逃げ出したくなるような、絶望的な悲しさに襲われていた。


だけど今は、そんな感情は微塵も沸き起こって来なかった。


心が全然痛くならなかった。


それどころか、胸の奥底からふつふつと温かい気持ちが込み上げて来て、おかしくて楽しくて仕方がない。


ほんの数時間前まではガチガチに緊張していた筈なのに、いつの間にこんなリラックスしていたのだろうか。


麻宮君はもちろん別として、まだ今日で2回目、トータル5時間くらいしか皆さんと接していないというのに。


人見知り検定段位クラスのこの私が、出会って間もない人達に囲まれても萎縮する事なく、こんな呑気に笑い声を立てていられるなんて。


奇跡と言っても過言ではない現象だと思う。


とても摩訶不思議な、だけどこの上ない幸せな気分を満喫しながら、私もお箸を手に取ると、自作のお弁当からほうれん草のごま和えをつまみ上げ、笑みの残る口元へと静かに運んだ。


そんなこんなでだいぶ賑やかなランチタイムが終了し、午後の業務に突入となった。
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