痛々しくて痛い
「ちなみにこれ、箱の横に部署名の紙が貼ってあるでしょ?さらに雑誌本体には付箋で個人名がついてるから。他の箱と中身がごっちゃにならないように処理してもらいたいんだ」

「個人名…?」

「そ。会社で処分したら有料ゴミになっちゃうから、用が済んだら持ち主に返却する約束になってんの」

「だから一箱だけ手元に持って来て、付箋を外さないように注意しながら入力し、すべて終わってから次の箱に取りかかる、っていう風にした方が良いと思う」

「まずは一回例としてやってみようか」


絹田さんは言葉を繋ぎながら雑誌をせっせと取り出し、自分と私の机の境界線上に積み上げた。


そして空になったケースをドア付近に置いてあった小さい台車に乗せ、私のデスクに横付けする。


「すでに何件か入力してあるんだ。そこに追加で打って行ってもらいたいんだけど…」


それを待っていたように今度は染谷さんが解説を始めながら端末を操作した。


「新聞社、テレビ局と来て、雑誌はここな。で、まずは本を一冊手に取る。ちなみに、入れる箱さえ間違えなければ中の順番はどうでも良いから。適当に机の上に出して、上から順に取って行って」

「はい」

「次に、表紙や裏表紙を見て雑誌名、出版社名をチェック。これは『コスモ出版』が出している『ナデシコ』という女性誌なので、『か行』の所に出版社名、隣の列に雑誌名、そのまた隣に『女性ファッション誌』と入力」
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