痛々しくて痛い
途中休憩を挟み、絹田さん大庭さんの、業務に関するやり取りの筈なのに何故か最終的に漫才の掛け合いのように変化する会話に「ウフフ」と笑いを漏らしたりしつつ、ひたすら入力作業を繰り返していたら、いつの間にやら定時の18時になっていた。


「よし。時間になったし、皆帰るか」


デスクの上を片付けながら染谷さんがそう呼び掛ける。


「特別急ぎの仕事はないんだから。帰れる時は帰っておこう」

「そもそも上層部が『無駄な残業はするな』って方針ですしね」


絹田さんがマウスをカチャカチャと動かしながら補足した。


どうやら「退勤」の打刻をしているようだ。


真々田屋では勤怠の記録を紙媒体ではなく、PC上で行っているのだった。


対面の麻宮君と大庭さんをふと見ると、二人も端末の電源を落としたり書類を引き出しに仕舞ったりしていたので、私も慌てて帰りの準備を始めた。


「それ、そのままで良いから」


机上に残ってしまっている雑誌の山を指差しながら染谷さんが指示を出す。


「一旦仕舞ってまた出して、なんてやってたら面倒だろ?重要書類って訳じゃないし、そのまま置いといて。明日も引き続きよろしく」

「はい。分かりました」


ケースの蓋を閉じながら返答した。


その後、各自が出したゴミを一ヶ所にまとめたりブラインドを下げたりして室内の整理整頓を終えてから「お疲れ様」と言い合い、全員一斉に部屋を出る。
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