痛々しくて痛い
私が寄り道している間に目当ての便が到着し、乗り込んだのだろう。


そんな事を考えつつひたすらに、前へ前へと歩を進める。


しばらくすると体が寒さに慣れ、精神が落ち着くのと同時に、今日1日を振り返る余裕が出た。


とりあえず無事、初日を乗り切る事ができた…。

思わず安堵のため息。


そして多分、明日からも大丈夫。


今日の出勤時…もう、約10時間も前の事になるけれど、その時とは明らかに気持ちのモチベーションが違うから。


もちろん疲労感はあるけれど、それを上回る達成感に包まれていて、まさかこんなに晴れやかな気分で帰路につけるとは、朝の時点では想像もしていなかった。


最初はどうなる事かと思ったけれど、この調子なら何とかうまく、やって行けそう。


おそらく過去最短記録で新しい環境に馴染む事ができたと思う。


何しろ皆さん良い人ばかりだから、こんな私でもすんなり受け入れてもらえたんだよね。


そして…。


何よりも、麻宮君が私の事を嫌っていた訳じゃなかったという事が分かって、本当に涙が出るくらい嬉しい。


あの課に配属になって良かったって、今ならそう思える。


その幸運に心から感謝して、これから精一杯、頑張っていかなくちゃ。


自分の中では近年稀に見る前向きな気持ちを抱えつつ、今にもスキップへと変化しそうな軽やかな足取りで、私は駅への道のりを辿ったのだった。
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