痛々しくて痛い
だけど、本人としては「むしろ今だからこそ決断するべき」という考えであったらしい。


「若くて体力があって、あまり仕事を抱えていない今のうちに結婚と出産を済ませておこうと思ってさ。親もサポートしてくれるらしいから、何とか両立できそうな感じだし」


そんな大きなお世話にも程がある疑問をぶつけた際、優子ちゃんはあっけらかんと答えてくれた。


「そんで子どもが小学校に上がって手がかからなくなったら、いよいよアクセル全開で頑張るつもり。その頃にはネタのストックもいっぱい溜まってるだろうし、計画通りに行ってれば、の話だけど、まだ30代前半だもんね。バリバリ働き盛りじゃん。これぞまさしく一石二鳥」


優子ちゃんはあくまでも明るく、だけど実は胸の奥に確固たる信念を秘めている事が窺える、凛とした声音で続けた。


「一生この仕事、続けて行くつもりだから。そして家族との触れあいの時間もきちんと確保したい。だから最初からあんまり飛ばさないようにしているんだ。ファンの方達はきっと、私の思いを理解してくれると思う」


「そっか」


それを聞いて、私も充分納得した。


そして優子ちゃんはやっぱり色々な面で思慮深い人なのだなと、改めて認識したのだった。


『それでね、前に話したやつ、改めて愛実にお願いしようと思って…』


一瞬意識を過去へと飛ばしてしまっていた私は、優子ちゃんのその言葉で我に返った。
< 132 / 359 >

この作品をシェア

pagetop