痛々しくて痛い
『そう。それと、結婚式に挑む新婦の験担ぎである『サムシングブルー』にもひっかけてるの』

「おお、なるほど~」


さすが常日頃から、必然性と説得力がきちんとバックグラウンドにある、斬新な物語を世に送り出している優子ちゃんならではの、豊かな発想力だな~と感心してしまった。


『良かったー。愛実に引き受けてもらえて』


言葉通り、心底安堵したようなトーンの声で優子ちゃんは続けた。


『材料費はもちろんのこと、手間賃もきちんとお支払いするからね』

「え?そ、そんな、良いよ」

『ダメダメッ。ちゃんと受け取って!』


優子ちゃんはきっぱりと主張する。


『親しき中にも礼儀あり。そういうとこは、きっちりビジネスライクに行こうよ』

「でも…。手間賃と言われても、どれくらいに設定したら良いか私よく分からないし…」


材料費のように、明確に数字で表せられるものじゃない。

『あ、その点は大丈夫。ウェルカムドールの製作を請け負ってるショップを色々調べて、だいたいの相場は分かってるから』

「えっ。でも、その方達はプロな訳でしょう?私の技術にそれを当て嵌めるっていうのは…」

『へ?何言ってんの?愛実だって『プロ』じゃない』


優子ちゃんは裏返ってしまった声を整えるように咳払いしてから続けた。


『…家庭科の先生になれるくらいの知識と技術があるんだし、編み物技能検定の1級だって持ってるんだから』
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