痛々しくて痛い
苦笑しつつも染谷さんは慌てる颯さんをフォローし返した。


「それと、その『メンズ』の誤用も地味にイラつくんだよね」


しかし伊織さんはまだ言い足りないらしい。


「メンズって、本来は『男性の』って意味だからね。和訳したら文章が全然繋がらなくなるじゃん。単純に性別を表したいのなら、日本語で『ダンセイ』で良いでしょっての」

「まぁまぁ、もやもやする気持ちも分かるけど、おそらく定着する事はないであろう若者言葉にいちいち目くじらを立てなくても良いんじゃないか?」


心底納得いかない様子の伊織さんを、染谷さんは優しく宥めた。


「きっと俺達だって大昔の人からしたら目茶苦茶な日本語の使い方してるだろうし」

「…まぁ、それを言われると反論できないですけど」

「だけどその中でもやっぱり、あまりにも突飛過ぎるものは自然と淘汰されて来たじゃないか。チョベリバだのMK5だの。今そんなワードを口にしたら、ちょっと痛々しい奴だと思われるし。本来の意味での『メンズ』はもちろん存在し続けるとして、間違った言い回しはそのうち廃れるんじゃないか?」

「な、なつかしー!」

「死語の例として思い付くのがそれってのが、やっぱ30代半ばですよね」

「ん?何か、だいぶ話がズレたな」


颯さんと伊織さんの感想にはあえて反応せず、染谷さんは会議の方向性の軌道修正に入った。
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