痛々しくて痛い
モクモクとしたぶどうの房に、真ん丸おめめと笑った形の口が付いていて、そこから華奢な手足が伸びている。


一粒一粒を区切る線は描かれていなくて、一見空に浮かぶ雲のようなフォルムだけれど、頭に茎がちょこんと付いているし、全体的なバランスから、ぶどうであるときちんと認識できるのだ。


「おお~すごい!さすがデザイナー」


麻宮君も興奮気味に言葉を発した。


「やっぱ手描きもイケるんですね」

「っていうか元々オレ、イラストが好きでデザインの道に進んだからね。便宜上PCでの加工技術を習得して、今はその作業がメインになってるけど、本音を言えばアナログの方が好き」

「いやーでも、見事なもんだなぁ。あんな短時間でパパっと仕上げられるなんて…」

「フフ。ありがと」

「名前はどんなのが良いかな?」


心底感嘆の声を漏らす麻宮君に、ちょっと照れながら颯さんが答えている間に、染谷さんが話を進めた。


「俺の勝手な印象だけど、パッと見そのぶどう、元気な男の子に見えたんだけど」

「んー。自分ではそこまで意識してなかったですけど…。手芸用品店のキャラクターが男の子って、おかしいですかね?」

「いや、そんな事ないでしょ」


染谷さんよりも早く伊織さんが反応する。


「今や男子だって家庭科は必修だし、むしろ、年齢性別関係なく気軽に真々田屋をご利用になって下さい、っていうアピールにもなるし」
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