痛々しくて痛い
Χ
ケイト
まさか俺の言動が、綿貫をあそこまでヘコませていたとは、夢にも思っていなかった。
ふいに異動日初日の、彼女とのあの会話が甦り、俺は左手で頬杖をつき、テーブル上をぼんやりと眺めながら、右手でボールペンをクルクルと回しつつ考える。
俺ってそういうとこあんだよな。
好き嫌いがはっきりしてて、一回「コイツ無理」と思ったら、威嚇して追い払って、徹底的に拒絶してしまう。
そしてその絶対零度の対応っぷりが、周りの人間の肝を冷やし、空気を微妙にしてしまう事もしばしば。
綿貫に関しては『微妙』どころか、トラウマレベルの罪悪感を植え付けてしまっていたみたいだけど。
何の罪もない第三者を巻き込んで追い詰めるなんて、人として最悪だよな。
誰かと縁切りしたくなっても、自分と相手だけの問題で終わるように、周囲に影響が及ばないように、今後は細心の注意を払って行動して行かなければ。
「おい、何ぼーっとしてんだよ」
そこで頭上から声がかかり、ふと我に返る。
「ちゃんと書いたのか?麻宮」
視線を上げると、中座していた友人が戻って来ていて、正面の席に腰かける所だった。
「とっくに書き終わったよ。ほれ、ちゃんと出席に丸付けたから」
「…ったく、手間取らせやがって」
トイレから帰還した友…陣内は、ブツブツ言いながら俺が差し出したハガキとボールペンを引ったくった。