痛々しくて痛い
「だからひとまずは実家に送って、そこから本人に転送してもらうなり、手渡ししてもらうなりを期待するしかないんだ、こっちは」

「…もし実家自体が動いてて、本人が誰とも繋がりがなかったら、もうお手上げだな」

「そしたら潔く諦めるよ。俺達幹事に新住所を教えない時点で同窓会に来る気がないんだな、って判断してさ。それ以上追跡する義務はないから」

「でも、やっぱりできる所までは手を尽くさなくちゃいけないんだろ?大変だよなー、幹事って」

「そうだよ大変なんだよ」

「だったらさ、無理して開催する必要なくね?正直、同窓会なんて面倒だって思ってる奴らもいるだろうし」


「……んな訳にはいかねーんだよ。やっぱ定期的にはやって欲しいって声も上がってるんだから。女子の幹事が結構アクティブだからな。俺だけ逃げる訳にもいかねーし」

「えっと…。女子の方は確か吉田弥生だったっけか?」


何かの行事では常に前に出て皆をまとめていた、明るく騒がしい一人の女子生徒の姿が脳裏に浮かぶ。


「そうそう。あっちは俺とは温度差ありまくりで張り切ってるけどな」


そこで陣内は『ハァ~、』と深くため息を吐き、次いでボソッと呟いた。


「あ~あ。あん時、グーさえ出していれば…」


彼が何の事を言っているのかはすぐに分かった。


話の流れ上それしかないし、過去に何度も吐かれて来たお約束の愚痴だから。
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