痛々しくて痛い
一発勝負のその戦いで、俺はチョキを出し、見事陣内に勝利して、その任務を免れたのだった。


「とにかく、俺がこんなに苦労してんだから、せめてお前は当日きちんと参加して盛り上げろよ。キャンセルは認めないからな」


「あ。そういや、綿貫は来んのかな?」

「は?」


話の腰をポキリと折るような言葉の挟み方をしてしまったので、陣内は一瞬意味が掴めなかったようで、ポカンとした表情になった。


「いや、だから、綿貫。今一緒に働いてるっつったろ?アイツは出席するのかなーって、ふと気になってさ」

「……ああ」


発言の主旨は伝わった筈なのに、何やら微妙な表情でそう呟くと、陣内は餃子に箸を伸ばしつつ続けた。


「っていうか、自分で聞けば良いだろ。会社で毎日顔合わせてんだから。今までその話は出なかったのか?」

「いや…。何か、職場に着くとすっかりその事を忘れちまってさ」


何せアイツとの会話には随所にトラップが仕掛けられているから。


そのあまりのボケぶりに思わず突っ込まずにはいられなかったり、爆笑せずにはいられなかったりして、下手すりゃ命の危機にさらされたりするからな。


『今度は何を言い出すんだ?』『一体何をやらかすつもりだ!?』と姑目線で綿貫の一挙手一投足に注目してしまい、実際に繰り出されたボケ攻撃に応戦するのに大忙し。
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