痛々しくて痛い
「…おはよう、ございます」


そう挨拶を返しながら、麻宮君は自分のデスクへと歩を進めた。


「あ!ヤバ!水汲んで来なくちゃ!」


すると颯さんはハタと気付いたようにそう叫ぶと、慌ててカウンターへと近付いた。


「茶器当番だから早く来たのに、愛実ちゃんとのおしゃべりに夢中になって、本来の目的をすっかり忘れてたよー」

「あ。す、すみません…」

「え?違う違う!オレが勝手に一人でエキサイトしちゃっただけだから」


ポットとやかんを手にせかせかとドアへと向かい、ノブを器用に操って開きながら颯さんは言葉を続けた。


「じゃ、ちょっと行ってきちゃうね。あ、後でそれ樹さんに渡すから。愛実ちゃん預かっておいて」

「分かりました」


颯さんがあわてふためきつつ給湯室へと旅立った所で、私は再びデザイン画へと目を落とした。


「……随分楽しそうだったじゃん」

「え?うん」


思わずにやけながら凝視してしまっていたけれど、急いで顔を上げて麻宮君へと視線を移す。


「ままだやんの正式なデザイン画を見せてもらってたんです。あと、細かい設定なんかも聞かせてもらって」


言いながら、私はその紙を麻宮君に差し出した。


「すっごく可愛いですよね~?」


「……ああ、すごいな」


麻宮君は心底感心したように呟いた。


「ウフフ」


私はそこで思い出し笑いをしてしまった。
< 277 / 359 >

この作品をシェア

pagetop