痛々しくて痛い
「いや、制作までご希望になるお客様は実はそれほど多くはなかったんですよ。やっぱり極力ご自分で頑張りたいという事で」


麻宮君がすぐさま解説を始める。


「手芸に精通していないお客様の為にアドバイスを差し上げるっていうのは通常の業務でも当たり前にやっている事ですから。さほど現場は混乱していなかったです」

「それでもやっぱり、オーダーメイドを希望するお客様は一定数いるワケでしょ?大変だと思うんだけどなー」

「受付から完成まで、一個作るのにどれくらいかかるの?」

「えっと…。一応お渡し日の10日前までにはお申し込みいただく決まりなんですけど…」


颯さんの質問に若干歯切れの悪い口調になり、頭をかきながら麻宮君は続けた。


「実はオーダーメイドサービスに関してはパートさん達に窓口になってもらってたんで、店長だったくせに俺、個々の作業時間は把握してないんですよね」


そこで麻宮君は私に視線を合わせた。


「綿貫の所はどうだった?」

「あ、えと…」


話を聞いていたのに一瞬言葉に詰まり、慌てて返答する。


「わ、私がいた店舗も基本、パートさん達に注文を請け負ってもらい、作業を分担してもらってました。それで必要な時に正社員も補助に入るという流れで…」

「まずは作る物の種類、希望の形やデザインをヒアリングして、布や付属品を用意して行くんでしょ?そこからして時間がかかりそうだよね」
< 284 / 359 >

この作品をシェア

pagetop