痛々しくて痛い
何故か途中口ごもった麻宮君に「?」となりつつも、私は返答した。


「でも、正社員とは違う動きをしていただく為に、パートさんを募集する際には基本裁縫が得意な方という条件をつけるでしょ?だから、私との技術に大きく差が生じるなんて事はなかったよ」

「…ふ~ん」

「ああ、そういや顔合わせの会の時に、出身大学の話になったよね。そんで『家政科大を出てるなら家庭科の先生になれたんじゃないの?』っていう話になって」


普段とは何かが違う麻宮君の様子にさらに「??」となっている間に、颯さんは約1ヶ月前の出来事を懐かしそうに語り出した。


「そしたら愛実ちゃんが『教師は大変だし、やって行く自信がなかった』って答えたんだよねー」

「は、はい」


過去に色々な人から何度となく浴びせられたそのお約束の質問と、これまたそれに対する私のお決まりの回答を、あの日もやり取りする事になったのであった。


でもホント、教師という職業は、よっぽど高い志がなければ勤まらないと思うんだよね。


学生時代に出会った家庭科の先生方は皆さん明るく朗らかで、時折厳しい面も見せるけれどそれを上回る優しさで私達を包み込んでくれて、ズバリ「肝っ玉母さん」と形容したくなるような方ばかりだった。


いや、まだ20代の先生もいたし、別に見かけがどっしりとしていた訳ではない(むしろ小柄で華奢だったりした)んだけども。
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