痛々しくて痛い
取材開始は13時からだけれど、当然、編集部の方はそれよりも前にお越しになる予定だし、さらに窓口となる私達はその時間までにお迎えする準備を完了しておかなくてはならない。


なので、普段は12時からの昼休憩を11時からとし、午後の始業時間も1時間早め、編集部の方が来るまで会議室にて受け入れ準備を整えつつ待機している事になった。


そして何と、その重大任務の前に鋭気を養っておこうという事で、お昼は染谷さんがポケットマネーで仕出しのお弁当をおごって下さる事になったのだ。


顔合わせの会の時にも出された、あのおかずがいっぱいの、すこぶる豪華で美味なお弁当。


「失礼いたしますー。桜花亭ですー」


11時ちょっと前、お店の方が件のお弁当を持って現れ、染谷さん指示のもと応接セットのテーブルの上にそれを並べると、彼と金銭の授受をした後、速やかに退室した。


「わーい。来た来た」


颯さんが陽気な声を上げながらテーブルに近付き、お弁当のフタの上に付いていた即席味噌汁の小袋を回収し始める。


「樹さん。これ、オレが作りますね」


本日の茶器当番の彼はにこやかに宣言した。


ちなみに、順番に担うと決まっている雑用ではあるけれど、さすがに一課の長にお茶の準備をさせたり給湯室でお茶碗洗いをさせる訳にはいかないだろうという事で、染谷さんはそのシフトからは外されている。
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