痛々しくて痛い
彼自身は「自分もメンバーに入る」と言っていたようだけれど、颯さんと伊織さんが他の部署の人の目が気になるからとお断りしたらしい。


私と麻宮君も同意見だ。


そんな訳で、人によって週に2回、当番が回って来るのであった。


「ああ、よろしくな。弁当は各自セルフサービスで持って行ってくれ」


颯さんに答えたあと、染谷さんは全体に向けてそう言葉をかけ、さっそくお弁当を一つ手に取ると、自分のデスクへと戻った。


「いただきます」と言いながら、伊織さん、麻宮君、私の順でその後に続く。


麻宮君はついでに颯さんの分も手に取っていた。


心ここにあらずな感じに見えるけれど、完全に自分を見失っている訳ではなく、必要な場面でそういった気配りができる所がやっぱりすごいな、と感心してしまった。


「お待たせー。何かちょっと薄くなっちゃったかもー」


言いながら、颯さんが使い捨てコップに入れたお味噌汁をトレイに乗せ、そのままそれぞれのデスクに配り始めた。


それと入れ違いに私達も、各自飲み物を淹れる為に順番にカウンターを使用する。


すべての配膳が済み、全員席に着いた所で、早めのランチタイムへと突入した。


「んー、おいしい!」


さっそく颯さんが幸せそうに感想を述べた。


「ここのだし巻き玉子、ちゃんとしょっぱくて超好きな味なんですよー。何だか妙に甘ったるいところとかありません?」
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