痛々しくて痛い
そんな風に考えながら機械的にお箸を動かしていたら、颯さんが突然感心したような声音で話を振って来た。


「え!?そ、そうですか?」

「うん。オレ、どうもこういう骨がいっぱいある魚をほぐすのって苦手でさー」

「ああ、確かに面倒だったよな。これってアジか?」


染谷さんも賛同しつつ、自分の目の前の、すでに骨だけになっているお魚ちゃんをまじまじと見つめた。


ふと気付いたけれど、皆さんもうあらかた食べ終えていて、ご飯とおかずがまだ半分以上残っているのは私だけだった。


「あ。私、お魚が大好きなので…」


その事と、知らぬ間に食べ方をチェックされていたという事にダブルでドギマギしながら何とか返答する。


「特にここのは新鮮で身がプリプリしていて大好きです」


何てったって脂の乗り切った、丸々とした尾頭付きのアジの塩焼きが、お弁当箱の半分くらいを占領してドドンと横たわっているのだから。


とても食べごたえがあるし、視覚的にも楽しめて、お魚好きにはたまらない献立だった。


でも、早いとこ食べ終えないと…。


「うん。オレも味は大好きなんだけどねー」


そう続けながら、颯さんは相変わらず私の箸さばきを興味津々で凝視している。


ほ、誉めていただけたのは光栄だけれども、そんなじっくりと見つめられると…。


「ちょっと颯、お行儀悪いよ」
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