痛々しくて痛い
右斜め後方から、ものすごい力で腕を掴まれた。


「やめろ!無理に飲みこんだら、余計刺さるぞ!!」


私は心底びっくり仰天してしまった。


いつの間にやら間宮君が傍らに瞬間移動してきていたのだ。


そのまま腕を引かれて強引に立たされた。


「え?慧人、どこに行くの!?」

「給湯室です。病院の検索お願いします。あと総務に、取材中もしかしたら二人抜けるかもしれないってのも伝えておいて下さい」


颯さんだけでなく皆さんに向けてそう答えながら、麻宮君は私の手を引きつつ出入口へと向かうと、ドアを乱暴に開けた。


廊下へと出て、そのまま給湯室めがけて突き進んで行く。


本来の休憩時間よりだいぶ前なので、当然、そこは無人だった。


麻宮君は流しの前で立ち止まると、その向かいにある冷蔵庫の脇にくっ付いているキッチンペーパーを勢い良くガラガラと巻き取った。


あ、会社の備品をそんなに豪快に…
「口開けて」

「……え?」

「早く」


ハラハラしながら見守っていた私に、麻宮君は厳しい表情でそう命令を下した。


訳が分からぬまま、おずおずと口を開くと、麻宮君はさらに私との距離を詰め、左手で持ったキッチンペーパーを私の顎の下に添えると…。


何と、あろうことか、いきなり口内に右手の指を突っ込もうとして来た。


えええぇぇー!?



「や、やだっ!なにするの!?」
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