痛々しくて痛い
当然私は顔を背け、その手から逃れる。


「動くな!今取ってやるから!」


と、取ってやるからって!


お医者さんでもないのにそんなことできるの!?


しかもこんな原始的な方法で!??


「うっ。んぐっ」


何て大混乱に陥っている間に麻宮君にキッチンペーパー越しに顎をガシッと掴まれ、今度こそ指を挿入されてしまった。


容赦なくのどの奥を刺激され、猛烈な吐き気が襲って来る。


「う、えっ。だ、だめ、はく!」


麻宮君の両肩に手を着き押し退けようとしたけれど、その動きを押さえ込むようにして叫ばれた。


「吐いて良いから!」


びっくりしつつ、涙で霞んだ目で麻宮君を見上げると、とてつもなく辛そうな表情で私を見下ろしている。


「我慢できなかったら、ここに出して良いから。お願いだからじっとしててくれ!」

「だ、だって、そんな事したら…」


麻宮君が汚れちゃう、と言おうとして、その前に条件反射でゴクンと唾を飲み込んだ私は『あれ?』と思った。


何か、痛くない…。


「あ」

「どうした!?」

「骨、取れたみたい…」


念のためもう一度ゴクンとしてみる。


やはり痛みは感じず、ホッとして、体の力が抜けた。


良かった。


これで普通に仕事ができる。


色んな人に迷惑をかけないで済む。


「…ったく。驚かせやがって…」
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