痛々しくて痛い
すすり続けていないと引力に負けて垂れ落ちるであろう鼻水が、そこに付着してしまうのではないかと気が気ではなかった。


と思っていたら、今度は髪の毛をなでなでしてくるし…。


「麻宮君?」


その体勢から、だいぶくぐもった声で問い掛ける。


ど、どうしよう。


早く皆さんの所に戻った方がいいんじゃないのかな…。


とか思っていたら、今度はいきなり突き飛ばされた。


麻宮君の瞳は心底仰天したように大きく見開かれている。


ええー!?


そ、それはこっちのリアクションだよぉ。


そのまま彼は、一人でさっさと給湯室を出て行ってしまった。


一瞬呆けてしまったけれどすぐに我に返り、新しいキッチンペーパーを切り取って顔の色んな水分を拭き取った後、床に落ちていた物と一緒にゴミ箱に捨てて、私も急いでその場を後にした。


すでに部屋の前に到達し、ドアを開けている彼の姿を視界に納めながら廊下を小走りに進む。


「あ、慧人」

「愛実ちゃんは!?」


伊織さんと颯さんの声が微かに聞こえてきた。


とても申し訳ない気持ちになりながら、そっとドアを開ける。


「あ、愛実ちゃん!」

「大丈夫だったの?」

「は、はい」


おずおずと言葉を繋いだ。


「無事取れました。お騒がせしてしまってすみません」

「あ~、良かった~」

「やれやれだな」

「つーか、騒いでたのは主にこの男だけどね」
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