痛々しくて痛い
綿貫の、無意識下に繰り出されるボケの数々に、無邪気に笑えていたあの頃が懐かしい。


遠慮なく突っ込めていたあの日々が。


ついこの間の事なのに、遥か遠くに過ぎ去った出来事のように思える。


颯さんもたいがい天然だけど、彼の場合ポテンシャルが高過ぎてしかも綿貫よりも繰り出す弾数が多く、いちいち反応していたら俺の芸人としての腕がムダに上がってしまう。


だから颯さん対策は、彼に負けない抜群の防御力、戦闘力を誇る伊織さんに主にお任せしていた。


やっぱ俺には綿貫がちょうど良いんだよ。


程よいタイミングでひょろひょろと発射されるあの低空飛行のボケを、空の高みへと押し上げるのが快感なんだから。


だけれども…。


最近はとてもじゃないけどそんな気分にはなれない。


それ以外の事に意識が集中し過ぎていて、彼女のボケが拾えない。


ホント、俺は一体どうしてしまったんだろうか。


悶々と自問自答を繰り返す。


なんて、そういった行動もまた自分の精神に新たな負担を増やし、さらに追い込まれるという、悪循環に陥ってしまっていたのだった。


心身共にそんな最悪な状態の中迎えた、取材当日。


……綿貫が、最大級にやらかしてくれた。


これでもかとばかりに俺を翻弄してくれた。


いや、人のせいにしてはいけない。
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