痛々しくて痛い
きっともう誰もフォローなんかできない。


その時、部屋のドアがノックされ、勢いよく開かれた。


「失礼！染谷君、午後の取材の事なんだけど、さ…」


しかし、出入口から至近距離の位置に固まって立ち尽くす私達の姿にまず驚き、さらに室内に漂う不穏な空気を感じ取ったのか、入室しようとしていた男性はその場で足を止め、言葉も途中で尻切れトンボになった。


「はい。何でしょうか？後藤部長」


染谷さんは爽やかな笑顔を浮かべながら足早にドアに近付くと、私達の事を隠すようにして来訪者の前に立ち塞がり、そこで会話を始めた。


後れ馳せながらその人が、今日我が部署と合同でインタビューを受ける、商品企画開発部の長である事を認識する。


すると今度は伊織さんがふっ、と息を吐いた後、私に接近し、ポケットからハンカチを取り出した。


「さ、気持ち切り替えて。早くお弁当食べちゃいな｣


言いながら、優しく涙を拭いてくれる。


ありがたい…。


そこで以前、颯さんが彼女に言っていたらしい言葉をふいに思い出す。


本人は不本意かもしれないけれど。


伊織さんはホント、生まれながらの天然オトコマエだ。


その凛とした優しさに、またもや涙が出そうになってしまった。


皆さんに迷惑をかけて、怒られて、泣いて、逆ギレして、場の空気を最悪なものにして…。


私ってなんて、社会人失格なんだろう。
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