痛々しくて痛い
アミ
食欲はかなり失せてしまっていたけれど、せっかくの染谷さんのご好意と、料理人さんの労力を無駄にする訳にはいかないと、頑張ってお弁当を平らげ、その後の取材に挑んだ。
と言っても、各部署への案内役は颯さん、インタビューに答えるのは染谷さんなので、私達3人が取材そのものに関わるという事はなかった。
あくまでもサポートとして、そしていずれ自分にも回ってくるであろうそれらの業務の研修の意味で、付いて回っていただけだ。
とはいえ、伊織さんと麻宮君は必要な場面ではサッと迅速に動き、まさに『サポート』を完璧にこなしていた。
一方私は、その前に起きたあのアクシデントに意識を持って行かれてしまい、終始ぼんやり、時たまハッと我に返って機敏に動く二人を見てただおろおろおたおた慌てふためく、というのの繰り返しで、一切何の役にも立ってはいなかった。
もちろん、自分を取り戻しているその間だけは、役には立たなくてもせめて邪魔だけはしないように行動していたつもりだけれど。
そんな訳で取材中はちょこちょことやる事があったし、麻宮君とじっくり話し合いをするという場面は当然なかった。
それどころか、視線さえかち合わないようにしていたし…。
なので彼と私の間には、勘の鋭い人なら何かしら感じ取ってしまうであろう緊迫した空気が漂っていた。