痛々しくて痛い
会話を交わす上で自然と向き合う事になるし、その際にその事実に気付いたというだけの話だ。


つまり、致命的な化粧崩れが発生しないくらい、肌のコンディションが整っているという証拠で、だからこそ無頓着でいられる面もあるのだろう。


本人が陰で努力しているからなのか持って生まれた物なのかは分からないけれど、世の中の大半の女子が羨望の眼差しを向けるであろう、その肌質。


「何か遅くないか?」


そんな事を考えていたら、樹さんがポツリと呟いた。


「え?まだ1分くらいしか経ってないですよ?」

「いやいや、こういう時の1分はなげーよ」


颯さんに反論したあと樹さんは宣言した。


「いいや。俺、階段で帰るわ」


言いながらすでに歩き出している。


「じゃあ、私もそうしようかな。最近運動不足だし」

「あ、オレもオレも。どうせひたすら下るだけですもんね」


伊織さんと颯さんが後に続いたので、自然の成り行きで俺もそれに従った。


踊り場へと到着し、階下に向かって歩き始めた所で、コートのポケットに移し変えておいたケータイが震え出す。


急いで取り出しディスプレイを見てみると、普段よく利用している通販サイトからのメルマガだった。


そこでふいに閃く。


綿貫に、メールしてみようかな…。


今後何かしら業務連絡を取り合う事もあるだろうと、異動してすぐの頃、全員で番号とアドレスを交換していた。
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