痛々しくて痛い
アミ
「聞いてるのか綿貫!」
あれれ?
この可愛い少年はどこの誰?
見慣れたオフィス内にて、私の真っ正面で、厳しい表情で仁王立ちしている。
真っ黒で、サラサラヘアーのきのこカット。
ぱっちり二重のキラキラお目々。
私よりちょっぴり小柄な男の子。
あ、なんだ。
高1の頃の麻宮君じゃない。
「緊張感が足りないんだよ。もっとしゃんとしろ」
そしてとっても聞き覚えのあるこのセリフ…。
時間軸がとんでもない事になっているけど、すぐにその矛盾を解明できる事象に思い至った。
きっと私は今夢の世界に居て、あの時の再現VTRを鑑賞している所なのだろう。
小さい時から『あ、私、今夢を見てるんだな』と思いながら夢を見るという経験が、私には多々あった。
すっかりお馴染みのシチュエーションという訳だ。
ただ、何故に麻宮君の見かけがこの年代に設定されているのかは、依然として謎だけど。
「カルチャーセンターの集まりじゃないんだから」
彼はボーイソプラノのキュートな声で、それにはそぐわない辛辣な言葉を紡ぎ続ける。
あの当時の麻宮君の声質なんて正直覚えていないんだけど、私の脳内が勝手にそのビジュアルに見合う声をアテレコしているのだった。
んふふ。
なんか麻宮君、すごく可愛い。
私も一生懸命答えた。
「うん。ごめんね?」
あの時素直に言えなかった言葉。