痛々しくて痛い

それを鞄に戻そうとした瞬間、通話である事を示す着信音が鳴り響く。


「は、はい」


思わず、相手を確認しないまま電話に出てしまった。


私のケータイはいまだにガラパコスで、本体を開くと同時に応答できるように設定してあるのでそうなってしまったのだ。


もちろん、普段は閉じた状態でも見られる背面ディスプレイで確認してから出ているのだけれど、今回はついついそのプロセスを忘れてしまったのだった。


「もしもし？」


『………』


「…もしもし？」


『ふ…うぅ…えっ』


え…。


な、なに？このうめき声は。


もしかして変態電話かしら？


申し訳ないけど、ピンクな話題にお付き合いできるようなスキルは持ち合わせていないし、そんな精神的余裕もないので、速やかに切らせていただこうとした、その時。


『あみちゃん…』


弱々しく名前を呼ばれた。


えっ。
この声って。


そこで初めてディスプレイを確認し、遅ればせながら電話の相手を認識する。


「えっ。颯さん？どうしたんですか？何故に泣いていらっしゃるんですか！？」


すぐに返答はせず、しばらくクスンクスンと鼻をすすり続けたあと、彼は衝撃の告白をした。


『け、慧人が、会社の階段から落ちて、頭を打って、今病院に運ばれて…』