痛々しくて痛い
入口から見て右手の壁際にスチール製のデスクとそれ用のキャスター付き、背もたれ肘掛けありの椅子、そしてその横にスツールが置いてあり、その背面にベッドが設置されていて、その上に胸元までタオルケットを掛けられた麻宮君が横たわっていた。


おそらく検査衣と思われる水色の甚平みたいな服を身にまとっている。


目を閉じていて、私がドアを開けても何も反応がなかった事から、どうやら本格的な睡眠に入ってしまったようだ。


検査と治療が無事済んで、気が抜けちゃったのかな。


それでなくても激動の1日だったもんね。


スツールを、勝手に就寝中の麻宮君の右横に移動させて、そこによいしょ、と腰を降ろす。


改めて間近で観察してみると、額に何やらシートが貼られている彼の顔はとても青白かった。


半袖の上着から、捻挫をしたという右肘付近に巻かれている包帯がちょっとはみ出している。


また、ベッドの左側には点滴台がセットされていて、その管が麻宮君の左腕の血管まで伸びていた。



……まずい。


何だかまた涙が出て来そうだ。


だって、こんなに痛々しい麻宮君の姿を見るのは初めてで。


私の胸は張り裂けそうなほど、ズキズキと酷く痛んだ。


「ん……ぅうっ…」


するとその時、麻宮君が呻き声を上げながら身じろいだ。


ドキッとしつつ、その顔を覗きこむと、彼がゆっくりと瞼を開く。
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