痛々しくて痛い
「意外と冷静なんだな」


いつもの調子が戻ってきている。


威風堂々としていて余裕綽々で、我が道を行く麻宮慧人君が、完全に復活しようとしている。


先ほどのドMっぷりもだいぶ薄らいで来ていて、今では半角小文字の「m」くらいの存在感になっていた。


そこで私は反論した。


「だ、だって、いきなり口の中に指を突っ込まれて、のどちんこを触られたことに比べれば…」


インパクトでは負けるもん。


「いや、のどちんこって…」


ムードねぇな、と、麻宮君は苦笑いした。


「つーか、アレとコレを同じ土俵に上げるなよ。まったくもって別次元のもんだろうが」

「…ん?」


いまだぼんやり感が消えなくて、話をきちんと聞いていなかったので、もう一度繰り返してもらおうと思ったのだけれど、それを促す前に麻宮君は、ニヤッと不敵な笑みを浮かべながら先を続けた。


「言っとくけど俺、もっとすっげーテク、持ってっから。それこそ綿貫が頭の芯までぼーっとしちまうような…」
「えー。ホント?すごいね。今度じっくり教えてね」

「へ!?」


心底感心した私の言葉に、なぜか麻宮君はギョッとした表情になった。


そしてみるみる顔面が赤く色付いていく。




なんで赤面してるの?


変な麻宮君。


でも、あれよりすごい技術って、一体なんだろう?


止血?


心臓マッサージ?


すごいね、麻宮君て。
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