痛々しくて痛い
色んな応急処置の方法、知ってるんだ。


歩く医学事典だね。


優秀な人って、様々な知識や技術を身につけているものなんだな。


何て感心している間にも、麻宮君の顔はますます赤みが増して来た。


『もしや打ち身が原因で、熱でも出てきた!?』と心配になり、おでこを触ろうと右手を伸ばしかけたその時、部屋の戸が勢い良くガラッと開かれる。


「ハイハイ!」


伊織さんがパンパン、と手を叩きながら入室して来て、ベッドに近付いた。


「恥ずかしいから、強制終了ね!」

「つーかキミ達、今、キ、キッスしてたよな?え?なんでキッス!?その必然性は!??」


その後ろから詰問口調の染谷さん。


「慧人のあだ名、今日から破廉恥大魔王に決定ね」


そして最後尾には、珍しく冷めた顔をして、相変わらずのネーミングセンスを披露する颯さん。


冷静にきちんと戸を閉めている。


……なんか、良いな。


この5人が揃ってるのって、やっぱ、良いな。


「すみません。あんま騒がないで下さい。頭に響くから」


怪我人にそう言われてしまっては、皆も何となくそれ以上は責められなくなってしまい、一瞬その場が静まり返った。


しかし、すぐに颯さんが「ハーッ」と大げさにため息をつきつつ、先ほどよりも音量を落として言葉を発する。


「あーあ、やっちゃったよね、慧人。真々田屋始まって以来の大失態じゃない?」
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