痛々しくて痛い
言葉を繰り出すタイミングも申し分なかった。


何だか徐々に、お笑いセンスが向上していくこの二人…。


「あ、そうだ慧人」


そこで伊織さんがおもむろに切り出す。


「この後実家のご両親が来て下さるらしいから」

「え!?」

「頭打ってるから念のため一晩泊まるんでしょ?今、ベッドの用意をしてもらってるんだよね」

「総務に実家の番号調べてもらって、俺が電話したんだよ」

「うわー。呼んじまったんですか…」


染谷さんの解説に、麻宮君が『あちゃ~』という顔をした。


「当然でしょ?親御さんだって、大切な息子が一晩とはいえ入院するんだから、ちゃんと連絡して欲しいだろうし」


伊織さんが物申す。


「いやでも、絶対なんやかんや文句言われるだろうし…」

「自業自得!」


そこで颯さんがキッパリと言い切った。


「親に怒られるのなんか気にしてる場合じゃないでしょ?樹さん、あちこち電話かけてくれたんだよ?それに会社で待機しててくれた人や、今後労災の手続きとかやらなくちゃいけない担当者さんとか、色んな人にご迷惑をおかけしてるんだからね!」


颯さんの周りにはこれでもかとばかりにお兄ちゃん風がビュービューと吹き荒れていた。


「とにかく、今は皆の言う事を聞いて、大人しくしてなさい!」

「…はい。すみませんでした…」


その見事なお説教に反論の余地はなく、麻宮君は神妙な顔付きで頷いた。
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