痛々しくて痛い
エピローグ
それはさておき……。
お気付きになっている筈なのに、どなたもツッコんで来ないのだけれども、相変わらず麻宮君の右手は私の左腕を掴んでいる。
気を使ってちょっと無理な姿勢でいたもんだから、だんだんとしんどくなってきた。
なので今後の動き方について打ち合わせを始めたお三方の声を聞きながら、私はそーっと腕を外したのだった。
途端に麻宮君が視線を送って来る。
指先が追い掛けてこようとする。
いえいえ、大丈夫だから。
私は逃げも隠れもしませんよ。
すごく怖くて痛い思いをしたんだもんね。
その心細い気持ちはとても良く分かる。
近くにある物なら、思わず藁でも掴みたくなっちゃうよね。
外した腕の代わりに、今度は私の手のひらを差し出した。
麻宮君が無理して力を入れたりしないように。
少しでも安心してもらえるように。
私の方から先手を打って、麻宮君の指先を、優しくそっと、握り締めて差し上げた。
そこでふと思う。
麻宮君の為に取った行動の筈なのに。
私の方こそ、その手を触っているだけで、何ともいえない安堵感が沸き起こり、とっても満ち足りた、幸せな気分になれたのだった。