痛々しくて痛い
そこまで私に積極的に関わらなくちゃいけない必要性なんて、これっぽっちもないじゃないの。


ましてやこの麻宮君に限って、そんな陰湿なことに情熱を注いだりする訳がない。


いくらテンパっているとはいえ、失礼極まりない妄想を繰り広げてしまった。


だけどやっぱり、あの時のあの事件を思い返すと、彼のこの屈託のなさがどうにもこうにも腑に落ちなくて…。


「ホント、覚えなくちゃいけない事だらけで、毎日が勉強勉強の日々だったからなー。無我夢中で過ごしてたら、いつの間にやらここまで来てた、って感じだよ」

「なになに?さっそく二人で思い出話か?」


心の中でぐるぐると考えを巡らせ過ぎて、いよいよ私の思考能力が限界に達しようとしたその時、染谷さんが爽やかに問いかけて来た。


「あ、すみません。もしかして戸締まりします?」

「いや、まだ大丈夫だよ。この後この会議室は使う予定ないし」


麻宮君の問い掛けに答えてから染谷さんは続けた。


「同期と思わぬ場所で再会したら、そりゃテンションも上がるよな」

「そうなんですよー。しかも綿貫とは入社年度が同じってだけじゃなくて、実は高校時代のクラスメートでもあって」

「えっ。そうなんだ」

「じゃあ途中ブランクはあれど、二人はおよそ10年来の付き合いって訳だね」


残りの『販売促進~』のメンバーである、大庭さんと絹田さんも自然の流れで会話に加わる。
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