痛々しくて痛い
だけど私はそれとは比べ物にならないレベルの、まるで魂が抜け出てしまったかのように生気の感じられない、悲惨な形相で立ち尽くしていたと思う。


「何あれー」


しかしその修羅場のきっかけを作った渡辺さんはさほどダメージを受けた様子はなく、そう声を発しながら私の傍らへと戻って来た。


「あそこまで怒る事ないじゃんねー?」


同意を求められたけれど、とてもじゃないけど返事ができるような状態ではなかった。


「でもさ、これからは気を付けなね?」


アルバムをケースに入れながら渡辺さんは続ける。


「麻宮君、昔の自分のビジュアルにすっごくコンプレックスを持ってるみたいだし。綿貫さんはホントにたまたま、偶然、彼と一緒のクラスになった事があるってだけの、赤の他人以外の何者でもないんだから。旧友ぶって調子に乗って、あんまり麻宮君の過去を第三者に言いふらしたりしない方が良いと思うよ?」


そして「はい」と私にアルバムを差し出した。


ギクシャクとした動きで両手を上げ、それを受け取った所で、渡辺さんは踵を返し、山本さん達に呼びかけた。


「あーあ。何かシラケた。気分転換に売店でも行かない?」

「あ、行く行く」

「そうだ。私お茶買おうと思ってたんだ」


ワイワイ賑やかに会話しながら3人が部屋を出て行ったのを呆然と見送ったあと、私もフラフラと歩き出した。


ど、どうしよう。
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