痛々しくて痛い
そこで、もう何度目になるか分からない痛みに襲われて、思わず顔をしかめながら、鳩尾の辺りを右手でさすさすと擦った。


と同時に過去へと時間旅行していた意識が無事現在へと帰還する。


まさか新しく発足された部署に、同時に異動する事になるなんて…。


いや、同じ会社に勤めている限り、こうなる可能性は充分にあったのだけれど、まさかこんなに早くそんな日が訪れるだなんて、想定の範囲外にも程があった。


ため息を吐きつつ体から手を離し、カップを手に取ると、気持ちを落ち着かせるようにゆっくりと、中身を口内に流し込んだ。


それを飲み下しながら、心の中で呟く。


とにかく、後は麻宮君の出方次第だよね…。


今日は話しかけてもらえたけれど、いざ仕事が始まったら、どういう態度を取られるか分からない。


もし、彼が極力私と関わらないようにしている事が感じられたら、甘んじてそれを受け入れる事にしよう。


もちろん、仕事はきっちりとやるつもりだ。


麻宮君の事だから、業務に支障が出るような言動は決してしないハズだし、私もそれに従わなければ。


表面上は穏やかに、だけど決して自分の過去の過ちは忘れず調子に乗らず、同僚として相応しい距離感を保ちつつ彼と接して行こう。


それがせめてもの彼への償いだ。


私はそう結論付けると、残りのコーヒーを一気に飲み干し、仕事の準備をするべく勢い良く立ち上がった。
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