痛々しくて痛い
私も慌ててそれに倣ったのだけれど、いかんせん瞬発力というものが欠落しているものだから、結局行列の最後尾になってしまった。


「それじゃあ行きますよ。ちゃんと付いてきて下さいねー」


観光旅行の添乗員さんよろしく、陽気に声を発しながら会議室を出る係長の後に続き、階段で1階上、このビルの最上階である重役室フロアまで上がって行った。


まずは当社のトップ、代表取締役会長兼社長の部屋に入室し、係長の「本日より本社勤務になった方達です」という説明のあと、「よろしくお願いいたします」と皆で挨拶。


会長に労いのお言葉をいただき、それに感謝の意を述べたりなんだりのやり取りを終えてから恭しくそこを退室する。


他の重役室はもちろん、同フロアにある秘書課にもお邪魔したあと、5階に降り、そこから各階の各部署に同じような挨拶を繰り返していった。


いわずもがなで、『販売促進総合プロデュース課』も。


1階までたどり着き、社員食堂兼売店、警備員室、クリーンスタッフの方の控え室を回って最後に受付の女性にも挨拶を済ませた所で、それぞれ配属された部署へと散る事になった。


ここまで降りて来るのにずっと階段を利用していたけれど、さすがに上っていく気力体力はなかったのか、係長は迷う事なく建物東側に位置するエレベーターホールに向かって歩き出す。


当然、私達も後に続いた。
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