痛々しくて痛い
「全員乗れるでしょうか?」


係長の傍らにいた男性が問い掛けた。


「ん?ん~。定員何人だったかな?ちょっとオーバーしちゃうかもしれないですね」

「では、今並んでる順で、適当に二組に分かれますか?」

「そうしましょう」


その会話を耳にしつつ、私は何となく皆さんよりだいぶ後ろに佇んで3基あるエレベーターをぼんやりと眺めていたのだけれど、突然横から声をかけられた。


「俺達は次の便で良いよな」

「えっ?あ、う、うん」


いつの間にやら麻宮君が接近して来ていたらしい。


ハッと我に返り、慌てて返答した。


まぁ、配属先が同じなんだから、エレベーターに乗るタイミングも合わせるのは当然の事だよね…。


また、この中ではおそらく私達が一番年下だし、先輩方に順番を譲る意味でも、麻宮君はすぐさま後方に下がったのだろう。


そうこうするうちに左端のエレベーターが到着し、係長含む、前方に並んでいた方5人がドヤドヤと乗り込んだ。


「それじゃ、お先にー」


係長の言葉のあと扉が閉まり、エレベーターは上昇して行った。


あまり間を置かずに今度は真ん中のエレベーターが到着したので、残り全員で乗り込んだ。


2階、3階と停まる毎に人数が減って行き、最終的に私と麻宮君、そして女性の3人で5階を目指す事となる。


「それじゃ、私はこっちだから」
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