痛々しくて痛い
「そういう訳ですので、申し訳ないのですが今日の所はこの辺で失礼します」

「うん、分かった。悪かったね、引き留めるようなことしちゃって」

「それじゃあ次に会うのは2月だね」

「またな、綿貫」

「気を付けて帰ってねー」


染谷さん絹田さん、麻宮君大庭さんの言葉に、一括でペコリと頭を下げて応え、椅子の背もたれにかけておいたコートと足元に置いておいた鞄を手に取ると、「失礼します」と言い残し、そそくさと会議室を後にした。


廊下を進みエレベーターホールまで来た所で、一瞬迷ったあと、そこを通り抜けて奥にある階段室まで歩を進める。


麻宮君とエレベーター内で二人きりになってしまったりしたらすこぶる気まずいので、箱を待たずにさっさと下りてしまおうと考えたのだ。


ここは6階だけど、ひたすら下るだけだから体への負担は大して無いだろう。


彼はまだ帰り支度をしていなかったし、先程の話の流れだとまだもう少し残っていそうな雰囲気だったけれど、やっぱり気が変わってすぐに部屋を出るかもしれない。


そしたら、エレベーターを呼び寄せている間に追い付かれてしまうかもしれないもんね。


あれだけフレンドリーに話しかけてもらっておきながら、こんな風に必死になって避けまくるなんて、かなり失礼な態度だとは思うけど……。


でも、彼の真意は掴めないから。
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