【短編】 黒い蝶


「そうだよね、。うん、そうだよ!
ねぇ、探そ?犯人!」


優姫も急ぎ足になり、いつの間に走り出していた。



私が先に走り、優姫が私を追うようにして走る。



「待ってぇ、早いよー!」と後ろから優姫の声、


「もーっ、遅いよー。」と笑いながら後ろを振り向く。


「っ、朱里!前!」


と、叫ぶ優姫。


「え?っ!キャッ!」

「っ」


バタ…─。



誰かとぶつかった衝撃で私は地面と打撃した。



「…っ、痛。」


膝から猛烈にジンジンと痛みが走る。


「大丈夫!?」と、優姫が近寄る。

なんとか私は立ち上がり、膝を見ると案の定、血が滲み出ていた。


…って、そんなことより。


私とぶつかった人…


チラ、と見ると
、ロングのツルツルの黒髪と、
高い筋の通った鼻、
凛とした目、ぷっくりのした唇…



超美形の女性でした。



「あっ、ご、ごめんなさい!大丈夫ですか?」

と、私は倒れている女性に手を差し伸べる。


「えぇ、大丈夫よ。」

私の手を軽く握り、立つ女性は背が高く、スラッとしていた。


綺麗…………


っと、見とれちゃった。



「あ、えと…じゃあ。」


と、私は立ち去ることに。



「……じゃあね。」

と、女性が。






スタスタと慎重に私は歩き出す。





「あっ、ねぇ。」


と、女性が私を止めた。



「あなた、知らない?私の猫…」


猫…?


ゾクッ



朝のあの光景を思い出す。




「し、知りません。」


「嘘よ、あなたすごい青ざめてるじゃない!」


「…っ、知りません!」


咄嗟に嘘をつき、



「……嘘つき。」と、女性がポツリと呟いたのを最後に私は逃げ出した。




「っ、はあ、はあ…。朱里、早いってば!」


「ごめん…」


「逃げて正解だったけどさ…。」


「え?なんで…?」


「だって、あの人カバンに大きな包丁持ってたよ?」
< 11 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop