【短編】 黒い蝶
共働きなので、開けてくれる人がいないから私がカギで玄関を開けた。
「ただいまー」
と、言って少し寂しさを感じた。
でも、一人の開放感がみちに満ちて私はつい、歌を歌う。
周りのみんなが出せない、ビブラートと高音のソプラノで自作の歌を歌う。
♪。.:*・゜
どうして
私だけこんなに傷つかなくちゃいけないの。
どうして
こんなに涙を流さなくちゃいけないの
無神経にみんなは言った、
君は不細工なんだよって
好きな人に振り向いてもらえるように、頑張ってるのに
Ah
みんなより可愛くなりたくて
Ah
みんなより強くなりたくて
頑張ってるのに、認められない。
どうして
私だけこんなに涙を流さなくちゃいけないの
どうして
私だけこんなに傷つかなくちゃいけないの。
Ah
ひどいよ
Ah
悲しいよ
Ah
辛いよ。
♪。.:*・゜
なんて悲しい歌をうたうんだ、と私は思いつつ、泣いた。
ひとりが好き。
だって、傷つかないじゃない?
自由だし、気を使わない。
ありのままなんだから。
ひとりがいいな。
なんて、私は思った。