君の声
ウィズユーカードを差しこんでいつもお決まりの窓際一番後ろに座った。
後ろからのこのことついてきた大祐が、フンフンと鼻歌を歌いながら自然に私の横に座ろうとしてきた。
「…ちょっと待ちなさい!ここには他の誰かが座るので、アナタは座らないでください」
「は~?ワケわかんない事いうなよ」
「うるさい!」
パンツを見られた事でそんなにねちねちムカついてはいなかったけど、なんでかわからないけど意地悪してやりたくなった。
自分でもどうしてかはわからなかった。
「お前の水玉パンツ見たって、な~んとも思わねぇから安心しなさいよ♪」
短い髪を手で撫でながら、私の横に鞄だけを置いた。
無理矢理座って来たりはせず、私の我が儘を許してくれた。
そんな大祐を見ていて自分の浅はかな行動が恥ずかしく思えてきたけど、こういう時どうしたら良いかわからない。
笑って
“ごめんね、ここ座って?”
ちょっと拗ねながら
“座れば?”
何を言えばいいのかわからなくなって、前の席の手すりに掴まっている大祐の血管の浮きあがった大きな手を眺めていた。
口を開けて言葉を紡ごうとしても、肝心の声が掠れてでてこない。