君の声
「…他の誰かって誰が横に座んだよ?」
大祐はそう言って笑った。
その笑顔に胸がキュンと締め付けられた。
何とも言えない苦しさが喉から足元へと染み渡っていく。
以前こんな感覚味わったのは、中2の時にした元彼と交わしたファーストキス。
放課後教室で振り向いた瞬間にされた軽めのキス。
その懐かしい感覚を、大祐が呼び戻した。
「横に座る…のは」
「のは?」
「私の新しくできる彼氏だけ。その人以外は座らせないの」
「~っ、おっまえ可愛くねぇなああ!」
そう言って私のおでこをペチンと軽く手のひらで叩く。
全然痛くないその手の力が、何だか無性に嬉しかった。
「まっ、彼氏なんか作るなよ♪お前は一人身が似合ってるしな」
「…どーゆー意味よぉ?」
「そーゆー意味だよ」
ギャアギャアとケンカが続いていたその時、前の席にいた同じ制服を着た男子生徒がフッと笑った。
「…ちょっと、あんた達おっもしれぇよ!何者?」
おや、よく見なくてもイケメン
大祐と同じ坊主が彼の良い感じに薄めのさっぱりした顔によく似合っていた。
「…は、はぁ?」
「夫婦漫才?」
「“夫婦”じゃないっ!」