愛を愛して
『朱里ちゃんのママとパパって優しいよね
素敵な家族だね』
『朱里ちゃんは幸せ者だね』
うん、そうだね。
でもそんなの、『本当』とは限らないのに。
皆は知らない。
毎晩二人が喧嘩している事を。
皆は知らない。
二人が私に八つ当たりする事を。
皆は知らない。
私には、兄がいるという事を。
知る必要もないけどね。
私は朝食のフレンチトーストを食べ終わり、席を立った。
「行ってらっしゃい、朱里ちゃん」
二人ににこりと笑いかけ、私は家を出た。
ああ、気持ち悪い。