愛を愛して
「ねー痛いよ朱里チャン」
「うるさい」
家が見えなくなった所で、掴んでいた手を離した。
「それ、誰にやられたの」
先輩の手のひらが、頬に触れる。
・・・冷たい手
私は先輩の手を即座にはらった。
「そんなことより、何の用ですか」
「ちょっと話がしたくて」
「・・・話?」
屋上であった時とは違って、顔がよく見える。
あの時は、表情がよくわからなかったけど
・・・この人、こんな優しい目を私に向けていたんだ。