五月雨・序

「今日は、歩きだから。」
「うん。」

大きな手で手を包み込んでもらう。
カーディガンをめくって入ってくる体温に、胸の鼓動が思わず高まった。

「…………。」
「ったく、気持ち悪かったら先に言えよな~?俺が、不安になるんだからさ。そういうことは早めに言っとけよ?」
「うん。」

嘘だなんて、言えないよ。
だって、優しすぎるから。

「俺は、お前が何て言ったって好きだよ?」
「うん……。」

目頭が、ジュッと熱くなった。
ごめんね、ごめんね圭吾。
アタシ、嘘吐いてるよ……。

< 102 / 122 >

この作品をシェア

pagetop