五月雨・序

“ブーブーブー……。”

ヴァイブレーションにも反応出来ない。馬鹿みたいに聞き終わったMDプレイヤーの光点滅を見つめている。何もやる気も起きないし、誰かと話す気力も残ってない。

「いい加減お風呂入りなさい。いつまでいじけてるの。何があったか知らないけど勉強もしないし。あんたって子は……。」

親の説教だってもうどうでもいい。何か、ものすごく疲れた。

「ったく……。」

ウッセーんだよ。馬鹿…………。
涙が滲んだ。涙が染みた。
アンタ、いつから友香を好きだったの?
そんなの、聞いてないよ。
こんなの、反則だよ。
さえない奴で良かったのに。
あのままのアンタが良かったのに。
遠くに、行かないでよ……。

「…………。」

“ブーブーブー。”

鳴り続けるヴァイブレーションに、アタシは手を伸ばす事が出来ないままでいた。
声がかすれて、アイツに思いさえも言えない。そんなの、もうウンザリなのに。
そのうちに消えるのは分かってるけど、今は今で、凄く辛かった。
それが、嫌で仕方なかった…………。


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