五月雨・序
「休みはー……谷口と安西か。仲良し同士休んで。遊んでんじゃないか?」

友香は本当だったけど、アンタそう言われてたよって、沙紀が言ってた。
正直、そんなこと思われても良かった。
アタシはただ泣いていて、誰も居ない空き教室で泣いていて。
あの時だけそこはアタシの場所だった。

でもさ、後で週番日誌を見て知ったんだ。
あの時、高橋も遅刻扱いになってたって。

結局、食べても忘れられなくて。
甘い味が口に残るだけで。
アタシの心は晴れやしなかった。

「…………。」

家に帰った後、他の家より大きい母自慢のベランダでボーっとギターを弾いていた。
従兄弟がやってて、負けるかってアタシもやり始めた。
でも、従兄弟はデビューして。アタシはとっくに越されてた。
良いなって。皆に注目されて。良いなって。ずっとずっと、羨んでた。

“ポロロン。”

今でも、あまり曲は弾けないままだった。
器用貧乏。趣味がありすぎてよく言われた。
全部、アタシは中途半端だったんだ。

「空って何で青いんだろ……。」

こんなことまで、言ってたらしい。
もう、どうでも良かったんだと思う。

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