五月雨・序
「…………。」
「…………。」
お互い、話せない。
時々メールは交わすけど、三回往復ぐらいで止まる。
アタシ達は、面と向って話さない。
というか、話せなくなっていた。
「なあ、谷口。今度の文化祭さ、一緒にやる?そっちのグループ入れてさ。」
「あ~、うん。何やるの?」
「これから決めるとこ。」
「そっか。いいよ、言ってみる。」
「おし、分かった。」
その代わり、何時の間にか高橋との距離は前以上にかなり近くなっていた。
『楽な男友達。』
そんな感じ。楽で、時々優しくて、時々意地悪で。
そんなとこも、楽しかった。
でもね、まだまだ、アイツへの未練は断ち切れていなかった。
アイツが女子と話してたり、ボディータッチされるたび、凄く嫌な気分になって。
高橋と付き合ってる?とか、好きなんじゃないの?とか、そういう噂だって気にしなかったけど、それだけが突っかかっていた。
「……美玖。」
「ん?」
もう、仲直りしていた。
というか、元々喧嘩なんてしていないから、すんなり受け止めた。
だって、誰も悪くない。それは分かってたから。
「高橋達が一緒に文化祭のやろうってさ。」
「本当!?」
でも一つ嫌だったのは、美玖が宗助と近づいていた事。
前より話してて、前より笑ってて。
アタシも高橋とそうしてる分、傷付かせてるのかもしれないけど。
ただ、嫌で仕方なかった。
こっちだけ、見ててよって。そんな独占欲。
「遥ーー……?」
皆も、気付き始めてたんだね。