五月雨・序
「村山の事、好きなの?」
紗江が二人で帰る道で言った。
紗江は人一倍大人っぽくて、優しい。
そんな人にだと、気付かれるんだ。
そのときそう思った。
「……うん。」
「やっぱり。なんか、ずっとおかしいなって思ってた。友香よりは分かりにくかったけど。」
「……そっか、知ってたんだ。」
「……美玖の事も、聞いた。高橋から。」
耳を疑った。
嘘、高橋は言ってたんだ。
紗江に。紗江だけに。
高橋は紗江を好きなんだ。
ふーん……。
胸は痛くないけど、ちょっと悔しい。
「ふーん……。」
「辛かったよね。」
「はは、もう未練なんか無いし。」
「……高橋、心配してた。嘘、遥が吐いたまんまだって。何か見てて辛いって。」
何だか、むずがゆいような、そんな感じ。
涙が出てきた。
「おせっかいだなぁ、二人とも……。」
紗江は、優しかったね。
傷つけないように、そっと背中を撫でてくれた。
それにアタシは、少しの時間支えられた。
ありがと、紗江。